2017年11月6日月曜日

【新人奮闘日記】第五弾は「混同」についてです!~スバリスト事件(知財高裁 平成24年(行ケ)第10013号)~

こんにちは
新人弁理士D.Mです! 

寒い日が増えてきましたね。朝起きるのが辛くなってきました。
そのような中、寒さと眠気に負けず、早朝執筆していますこの新人奮闘日記ですが、
今回のテーマは「混同」です。

そこでまず、「混同」が要件となっている商標法4条1項15号を以下で紹介させて頂きます。


他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

この15号ですが、商標や指定商品役務の同一又は類似が要件となっている4条1項11号に対して、類似の要件が課されていません(4条1項11号の類似については、新人奮闘日記第1回をご参照ください)
 
要件も「混同」のみと非常にシンプルな条文であり、この15号の文言だけでは、混同をどのようにとらえて良いか非常に難しいと思います。

そこで、今回紹介させて頂く裁判例を取り上げる前に、まず4条1項15号の「混同」について述べた判例である「レールデュタン事件」(平成120711)を簡単に紹介させて頂きます。

レールデュタン事件の規範では、
「混同を生ずるおそれ」の有無は、


    当該商標と他人の表示との類似性の程度、

    他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、

    当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに

    商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、

当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、
総合的に判断されるべきである。
と述べられており、
「混同」について考えるには、商標の類似性や商品の関連性だけでなく周知著名性等も考慮されると述べられています。

では、この規範を踏まえて本題のスバリスト事件について紹介させて頂きます。
以下概要をまとめた図になります。




原告である富士重工株式会社は引用1~4商標に基づいて、被告株式会社東洋システムの本件商標を無効するため審判を請求した事例になります。
引用1~3の「SUBARU」及び「スバル」と本件商標「SUBARIST/スバリスト」は商標が非類似であり、
引用4と本件商標は、指定商品が非類似の「紙類等」と「固形潤滑材や燃料等」であるため、4条1項11号の該当性は認められませんでした。
そこで裁判所は、本件商標は引用1~3と混同する、つまり4条1項15号に該当すると判断しています。

以下で簡単に判断理由をまとめてみました。

     当該商標と他人の表示との類似性の程度 

・全体として類似しなくても、本件商標からは「スバル自動車愛好家」の観念、引用1ないし3からは自動車ブランドの「スバル」との観念が生じる。
・自動車やその関連商品の分野では、スバリストの語はスバル自動車愛好家の意味として広く知られていた。
・スバリストの語が「スバル」に由来する造語であることは明らか。
→関連性があることは否定できない。

    他人の表示の周知著名性及び独創性の程度
 
   ・自動車の分野において引用1ないし3が周知著名性を有している。

    当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
    ・引用1~3と商品の関連性を有する

<コメント>
整理すると、スバリスト事件ではレールデュタン事件の規範である①~③に基づいて15号の該当性を判断したと思われます。
引用1~3と本件商標は非類似と認めているものの、観念上で関連性があると述べている点で、おもしろい判断だと私は思いました。
この様に、商標の類似性だけではなく、商標の観念上の関連性を考慮することができれば、
ブランド保護の幅が大きく広がると思います。
簡単な紹介でしたが、今回はここで以上になります。
11号だけでなく15号と、勉強することがたくさんありますが、着実に理解を進めていきたいと思います!


新人弁理士 D.M

 

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